言いましたが、 違います‼︎
ついやってしまった。
仕事モードに切り替える暇がなかったのが、いけないんだ!
「もういいですか?
慎太郎が、子供が心配なので戻ります」
慎太郎をダシに立ち去ろうとする。
今度は斉藤部長が我に返る番で
「ちょっと待って」
とクスクスと笑いながら私を呼び止めた。
「S商事関連の資料って他にもある?」
欲しいデータが足りなかったのだろうか?
辺りを見回し積み上がった段ボールを見た。
坂本さんにパソコン内の顧客データからS商事関連のデータを取り出す様に指示をして段ボールを漁る。
「これで全部かと思います」
と一冊のファイルを渡す。
斉藤部長はペラペラとファイルを見ると
「そう、これ。これ」と満足そうに微笑んだ。
「最後にお役に立てて、私の方こそありがとうございました」
素直に頭を下がる事が出来た。
坂本さんにも、
「色々とご迷惑をかけてごめんなさい」と頭を下げる。
「えっ‼︎やめないで下さい。
私、一人なんて無理です」
坂本さんの気持ちに心が救われた気がした。
「ありがとう。
そう言ってもらえるだけで嬉しいわ。
でも、決まった事だから」
「私を見捨てないで」
と私の腕にしがみつく坂本さんを見る。
自然と笑みが溢れる。泣きそうだ。