言いましたが、 違います‼︎
8-1
自分がここまで押しに弱い人間だとは思わなかった。
周りの評価を気にせずに自分の意見を貫くタイプだと思っていた。
三枝さんが持って来たデータをパソコンに打ち込んでいく。
正直、仕事があるのはありがたい。
何もする事がないと、変な方向に考えが進み不安になる。
そろそろ永太郎が帰ってくる。
今後を考えないととは思うが、
慎太郎との生活に慣れた私には、
慎太郎と離れると言う選択肢が見えてこなかった。
このまま慎太郎とだけ一緒にいるわけにもいかない。
私は赤の他人なのだから。
だけど、永太郎と一緒にいるという未来も見えてこない。
私と永太郎の関係。なんなのだろう?
やっぱり赤の他人としか答えは出てこない。
慎太郎にとって何がいいのか?
環境だったら、永太郎よりも私と一緒にいた方がいいに決まっている。
住む場所だって、育てるお金だってちゃんと用意出来る。
でも、やっぱり本当の親の元にいるのが一番だという事はわかっている。
でも、でも、でも
慎太郎と離れたくない。
「このまま山で遭難して帰ってこなければいいのにね」
大人しくバウンサーに乗る慎太郎と
なぜか斉藤部長から送られてきたラトルで遊ぶ。
キャッキャ喜ぶ慎太郎を見ると笑みが溢れた。