言いましたが、 違います‼︎
9
永太郎が帰って来てからは、平穏な日々・・
ではなかった。
あんなに大人しかった慎太郎が、
這いずりをし出したと同時に夜泣きをする様になった。
うつ伏せで顔をしっかりと上げてるなぁ。
呼んだらこっち向く様になったなぁ。
偶然でも気のせいでも、
可愛い慎太郎の姿を写真で撮りまくる日々。
手と手を取り合い初の寝返りを喜んだのも束の間。
戦車の様に器用に向きを変え始めた。
「色々な刺激を頭の中で処理するに、慎太郎も大変なんだよ」
なんて、偉そうな事を言っていても、
何日も続く日々に永太郎もダウン寸前。
慎太郎を抱きながら、ソファでうたた寝をしている永太郎。
そんな永太郎からそっと慎太郎を受け取る。
酷かった夜泣きが嘘の様に慎太郎は、キャッキャと笑っている。
「おはよう」
慎太郎をぎゅっと抱きしめなると
「おはよう」と永太郎が起きた。
「昨日も酷かった見たいね」
「寝たと思って、布団に置けば目を覚ましを繰り返す事、3時間。
人の腕の中で眠ってくれたが、座ると起きる。
座る事が許されたのが4時。さすがに肩が痛い」
「お疲れ様。
今日は、家にいるからとりあえずシャワーでも浴びて来たら?」
「そうする」
私が素直に言えば、永太郎も素直に従った。
永太郎が仮眠をとっている間に、慎太郎の世話をする。
永太郎が起きて来ると3人で散歩へ出掛けて、ランチを買い、川辺でのんびりと過ごす。
芝生を千切っては投げ、千切っては投げを繰り返す慎太郎は楽しそうだし、
その姿を一生懸命写真に収めようと凄い格好をしている永太郎も楽しそう。
のどかで平穏でゆっくりと時間が流れているのがわかる。
「ずっとこのままだったら良いのに」
自然と溢れる。
「じゃぁ、僕と結婚する?」
永太郎がニヤッと笑いながら言う。
いつもの冗談かと、フッと鼻で笑い「それも良いかもね」と言った。
今思う。言わなければよかったと。