言いましたが、 違います‼︎
遠くの方で女社員達が何か話している。
きっと私の事だろう。
前は、その言葉一つ一つが気になって仕方なかった。あそこにいる子達は少し前の自分。
随分醜い姿だなと今の私は思う。
「気になる?」
気を使って三枝さんが優しく私に問う。
「不思議と気になりませんね。
ただ、私もあんな顔をしていたんだなぁって思って」
彼女達を見て鼻で笑う。
「私は一流企業に勤めて、心身共に磨いて、一流の女。だから、相手も一流でなければ、私に相応しくないって思ってました。
でも、全然良い男捕まらないし」
私の思い出話を三枝さんは何も言わずただ聞いてくれた。
「でも、あんな顔してたんですね」
そりゃ、良い男も捕まらないわけだ。
自虐に笑う。
「それがわかるようになったってだけで、あの子達よりも根津の方が先を歩いてるって事じゃない?
誰だって、勘違いしてる時期があるものよ。
それに気付かずに年を重ねると、痛い女になるか、不幸せな女になるかのどっちかよ」
三枝さんの痛烈な言葉が心に染みる。
「あの子達の事なんてどうでも良いのよ‼︎」
三枝さんは私の肩に両手を強く握る。
「あんた達がどうなっているか‼︎それが気になるのよ」
「三枝さん、痛いです」