言いましたが、 違います‼︎
泊まっていけば?
両親の誘いを丁重に断り帰路に着く。
その道中、ずっとママの話が頭から離れなかった。
「一緒にいて自然な自分を出せる人が一番よ」
ママはそう言って笑っていた。
黙っている私に永太郎が話しかけてくる。
「お母さんと何を話してたの?」
あんたとの結婚を勧められていたなんて言える訳がない。
「別に」と答えるが、
「そうなの」と沈黙が耐えきれなくなり
「ママがパパと結婚した理由を聞いてただけよ」
私が渋々答えると永太郎は
「僕たちも、慎太郎が大きくなったら教えてあげないとね」
と小さく笑いながら言う。
「美紗都ちゃんが山で遭難した所を僕が助けたのが出会いだよって」
「だから、遭難してないって何度言えばわかるわけ‼︎」
「山で迷子になる事を遭難って言うって知ってた?」
豪快に笑う永太郎に、
「声が大きい‼︎慎太郎が起きる」と叩くと、
「ごめん」とバックミラー越しに慎太郎を確認する。
私達の話し声を元ともせず深い眠りにつく慎太郎。
「このまま朝まで寝てくれるといいんだけど」
「今日はいっぱい遊んだから、起きないかもね」
永太郎はただ黙って車を走らせ、私は流れる街灯を見ていた。
何も会話がなかったけど、息苦しさは感じなかった。