言いましたが、 違います‼︎

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「根津さん、ちょっと今いい?」

斉藤部長に呼ばれる。

「ちゃんと待ってください」と自分の仕事にキリをつける。

「何かありました?」

斉藤部長の元に小走りで駆け寄ると
「専務がお呼びだよ」と言われ、戦慄が走る。


何もなかったかの様に仕事に復帰している私。

と言うよりも、色々あり過ぎて専務の存在を忘れていた。

相変わらず忙しくしていてようやく落ち着いたので、私の処分が決定したのだろう。

懲戒解雇だとして、土下座でもなんでもして自主退職を認めて貰おう。女は度胸だ!

そう何度も心に言い聞かせて、ノックする。

中から、ひょこっと坂本さんが顔を出した。

「根津さん‼︎待ってました‼︎」

予想外の歓迎に戸惑いながら、死刑台に登る気分で一歩一歩前に進む。

見たくて仕方がなかった専務の顔を見るのが、怖くて顔を上げれない。

さっさと謝って、土下座して自主退職にしてもらって、荷物もまとめて、三枝さんと斉藤部長にお礼を言って

恐怖を紛らわす為にこれからの行動に思いを馳せる。
大きく息を吸って、女は度胸。
散りゆく花は優雅に大胆に。

「その節は・・・ご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ありませんでした」

勢いよく頭を下げる。

専務の、サイボーグ葉山の言葉を待つ。
沈黙が耐えきれない。

さっさと「クビだ」と言って欲しい。そうすれば「なんとか自主退職でお願いします」と言える。

何か言って!
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