言いましたが、 違います‼︎


今日、専務に呼ばれた話をする。

またいつものように「クビかと思ってドキドキした」とか「あんたの名前が出て何かしたかと思って謝っちゃった」とか話が脱線しても、永太郎は話を聞いてくれた。

この感じ、結構好きかも。


「なるほどねぇ。で、美紗都ちゃんはなんて答えたの?」
「だから、“本人に確認を取って連絡させます”って言ってら、連絡先を渡されたわ。それがこれね」

鞄の中から、連絡先の書かれた紙を取り出し渡す。

永太郎は受け取るとペラペラと紙で遊ぶ。
慎太郎はその紙を必死に目で追っていて可愛い。

「普通、先にこっちを渡さない?」
「どうせ今すぐに電話しないんでしょ。
だったら何先に私の話を聞くべきでしょ‼︎」
「確かに」

少し真剣に思いを馳せていた永太郎が、ニコッと笑う。

「美紗都ちゃんのそういう所、好きだなぁ」
「そういうのいらないから」

逃げてた訳じゃないんだけど、僕の事なんて忘れてるかと思ってた。

永太郎はとても小さな声で独り言の様に呟いた。

それに関して言いたい事はあったけど、「バカじゃないの」とだけ言い、

「そんな事よりお腹が空いたわ。晩御飯は何?」

私の膝の上に座る慎太郎の手を上下に動かし、「お腹が空いた‼︎メシはまだか‼︎」とジェスチャーをする。

何もわかっていない慎太郎はその動きが楽しい様で、キャッキャと喜んでいる。

その愛らしい姿に私も永太郎も自然と笑顔になった。

ただそれだけの事なのに、暗くなった空気が一気に明るくなる。子供の力は偉大だ。

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