言いましたが、 違います‼︎
なんだかイヤな予感がする。
永太郎に手土産を渡し、慎太郎を奪う。
「ここら辺を散歩してくる」とでも言ってその場を離れよう。
「永太郎」
あっ、遅かった。
いや、まだチャンスはある。
さぁ、感動の再会をしなさい。
その間に逃げるから。
一歩一歩距離を取っていく。
「そちらのお嬢さんは?どなた?」
心の中で舌打ちをする。
通されたリビングは少し散らかっていた。
思った家とは違うなぁと慎太郎を抱えながら、辺りを見回す。
その理由はすぐにわかった。
「モカちゃん‼︎ダメ」
慌てて入ってくる少女。
足元にはキャンキャンと吠えながらジャンプするチワワ。
1匹のチワワで雰囲気が台無しだ。
慎太郎を抱えたまま、跪いて座る。
ジャンプを止めないチワワの目の前に手を出し「イケナイ」と言う。
チワワは、ジャンプを止め不思議そうにこちらを見た。
口元に手の甲を差し出し、匂いを嗅ぐのを待つ。
「モカちゃんって言うの?はじめまして」
手にスリスリとしてきたので、手の甲でそのまま摩ってあげる。
「いい子だねぇ。モカちゃんより小さな子がいるから、仲良くしてあげてね」
モカちゃんが慎太郎の匂いをクンクンと嗅ぐ。
目を覚ました慎太郎も不思議そうな顔でモカちゃんを見ていた。
私の家でもっと大きな犬を見ている慎太郎は小さなモカちゃんを怖がることはなく、モカちゃんを見てニコッと笑った。
やっぱりこの子、大物になるわ