言いましたが、 違います‼︎
12-2
クククと笑う永太郎の声に我に帰る。
床にそのまま座り込んでいる私の肩を叩きながら「さすが美紗都ちゃん」と言うと、永太郎もモカに手の甲を差し出す。
「桜(サクラ)さん、犬を叱る時は名前を呼んではいけません。そんな事も知らないで犬を飼うなんて」
永太郎は、あからさまに大きなため息をつき立ちすくんでいる少女に向かって言う。
こんな口調で話す永太郎を初めて見た。
「何よ、突然来て偉そうに。今、勉強してる最中よ‼︎」
「私も好きで来たわけではありません」
永太郎は手土産を机の上に置くと、
「お口に合うかわかりませんが、皆さんでお召し上がり下さい」と口添えをする。
家族、だよね?
慎太郎を抱え、モカちゃんを支えて、身動きが取れない私はただその光景を眺めていることしかできなかった。
「まぁ。お父様が大好きなどら焼きを買って来てくれたの。お父様、喜ぶわ」
今、雄太郎さんがお父様を呼びに行っているからもう少し待っていてね
と加奈さんがお茶を出してくれた。
が、もう一度言う。
私は両手が塞がっていて身動きが取れない。
「ありがとうございます」と小さく会釈をする。
「まぁ、可愛い。今いくつ?名前はなんて言うの?」
「慎太郎です。今・・・」