言いましたが、 違います‼︎
微笑んでいると、「さすが悪役令嬢」と永太郎が私を小馬鹿にする。
「誰が悪役よ‼︎」
「あっ、ごめん。元だったね」
「はっ?」
さっきまでの永太郎はどこに行った?それは私もなのだけど。
永太郎と話とこんなやりとりが当たり前にすぐになってしまう。
「そういえば美紗都ちゃん、お嬢様だったね」
永太郎も煽るなぁ
と思いつつ、それに乗っかる。
「父は代々都内に土地を持ってるだけの家柄だし、母は室町から続く家系の出って言うだけよ。
ただ受け継いで、次に引き渡すだけ。
専務や奥様の実家の山野家と比べたら、大した事はないわ」
上には上がいる。
一応、そうアピールしておく。
桜さんはまだアワアワしているし、
加奈さんは戸惑ってるし、
永太郎は楽しそうだし、
私は未だ慎太郎とモカちゃんを抱いて動けないし、
この状況をどうにかしなさいよ!
永太郎にアイコンタクトを送っても、届かない。
「終わったかな?」
声がする方へ一斉に向く。
白髪の老人と年配の男性が立っている。
見覚えのある顔に、目を見開く。
やっぱり、専務の奥さんと一緒にいた男性だ。
確か、科研か科捜研かの人だった気がする。そんでもって、そのお父様は元警察庁トップ。
社内で壮大にネタバラシをしていた時の記憶が戻る。
あの時の気持ちを呼び起こすもので、少し身震いがした。
永太郎が私の元へ来ると、モカちゃんを床に下ろし、私を立たせた。
腰に手を回しながら、
「ご無沙汰しております」と頭を下げた。
釣られて私も頭を下げる。
「美紗都と慎太郎です。楽しく生きておりますので、(だから放っておいて下さい)」
永太郎がキッパリと言うと、二人は少し寂しそうな顔をした様に見えた。
この家にも色々あるようだ。
面倒事に首を突っ込むのは趣味じゃない。
だけど、なんだかムズムズする。