言いましたが、 違います‼︎


「ミルクで子供を育てるなんて、母親失格よ」

ようやく絞り出した言葉がそれ?

もっと他にあるでしょうに!
未婚、しかも年下の子に、そんな事を言われるとは思わなかった。
ガッカリだ。

憐れむ目で桜さんを見る。

さぁ、どの方向から攻めようかしら。

まぁ、そもそも

「私は慎太郎の母親ではありません。ので、母乳で育てる事は不可能です。
それに、そもそも母乳でないといけないと誰が決めたのですか?今時、お医者さんだってそんな事言わないわよ。
子供が飲んでくれればどちらでもいいんですよ」

冷静に正論で攻めてみる。

「あんた母親じゃないの‼︎なのに偉そうに‼︎」

それをここで言うのはどうなんでしょう?

本物の母親ではなければならない。
そう言いたいのでしょうか?

お父様の顔に怒りが、加奈さんの顔に哀しみが浮かんでいます。

この子、大丈夫かしら?

怒りや不安、戸惑いで自分が何を言っているか理解していないのだろう。

それが許されるのは、二十歳まで。
それを越すと私みたいに痛い思いをするんだよ。

目の前に立つ桜さんが昔の私と重なる。

周りに甘やかされ、許され、世界の中心にいた時の自分。
周りの人を振り回しても、自分が振り回される事を良しとしなかった自分。
全てが思い通りになると信じて疑わなかった自分。

私は微笑みながら慎太郎を抱くと、桜さんの前に立つ。

「なによ‼︎」

虚勢を張っているのが手に取るようにわかる。
彼女は私だ。

慎太郎を無理やり桜さんに抱かせる。
初めて子供を抱いたのだろう。
危なっかしい。

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