言いましたが、 違います‼︎


「そんな事どうでもいいの。本物だろうと偽物だろうと。
必要なのは、最後まで面倒をみる覚悟。
一生関わるか、一切関わらないか。
二つに一つなの」

三枝さんに言われた事だった。

いつもこの言葉が頭の中にあって、いつも自問自答していた。
答えは出てこなかった問い。

「それはモカちゃんも一緒よ。可愛いから飼う、みんなが飼っているから飼うじゃダメなの。
生きているんだから。病気にならない様に、迷惑をかけない様に、ちゃんと躾して、ご飯を食べれせて元気で少しでも長く一緒に入れるように最後死ぬまでちゃんと面倒を見なきゃいけないの。
私はその覚悟が出来たから、慎太郎と関わってる。それは一人では出来ないの。だから、永太郎と一緒に協力して一つの命を守ってるの。
 それが出来ないなら、今すぐモカちゃんを手放しなさい。受け入れ先ぐらい見つけてあげるから」

桜さんを前に熱弁を振るう。

なんかとんでもない事を口にした気がする。
心配になり、永太郎を見ると嬉しそうに笑っている。

ちょっと待って!
今私何を言った!

永太郎は「そう言う事だから」と言いながら
桜さんから慎太郎を受け取ると皆の顔をゆっくりと見回し
「僕は僕で楽しくやっていますので」と笑っている。

私にとってはいつもの永太郎なのだけど、皆には違う様だった。

戸惑った顔をしていたが、
お祖父様が「そうか。楽しくやっているか」と満足そうに頷いた。

「また顔を見せなさい」

お父様が言う。
桜さんを抱きしめている加奈さん。

なんだかよくわからないけど、蟠りが少し解けた様だった。
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