言いましたが、 違います‼︎
帰りの車の中で
「聞かないの?」
沈黙に耐えかねた永太郎が口にする。
「何を?」
「家の事」
「聞いて欲しいの?」
私が少し面倒臭そうに答えると永太郎はしんみりと「今日はごめんね」と呟いた。
「別に。大した事じゃないじゃない」
あっけらかんに言うと
「大した事じゃないかぁ」
と鼻で笑いながら言った。
当事者にとっては大した事でも、周りから見れば大した事のないことなんて、よくあること。
「何?可哀想だねぇって慰めてほしかった?」
揶揄うように言えば、
「全身で慰めて欲しかった」と永太郎が言った。
本気か冗談かわからない口調だったけど、わかりたくなかった。だから、あえて話を続ける。
「後妻さんと上手くいってなかったなんてよくある話でしょ。
自分だけ家族じゃない気がしたって、よく聞くわ」
愛人の元へ入り浸りで帰ってこない父親又は母親。あるいは両方。
離婚すればいいのに、子供の為、家の為に離婚しない親たち。
お金さえ渡していれば子供は成長すると思い込んでいる親。
よくある話だわ。
私みたいに両親の仲が良い家が、珍しいぐらいよ。
永太郎の家も、マシな方なんじゃないの?
「マシな方。確かにそうだね」
永太郎は小さく呟くと「ちょっと寄り道していい?」と車を走らせた。