恋と願いは欲せよ
「お、王子と同じクラスだ…」

入学式を無事に終え、新入生達は玄関近くに張り出されている各自のクラス割りに従って決められた教室へ向かう。

「よく見えるわね。私もう人で溢れかえっていて意味わからなくなって来たわよ…うっ、吐き気してきた…」

もちろんの事この状況、人で溢れかえったはるか遠くに見えるクラス割りを見るのは至難の業だ。
神奈(カンナ)はと言うとそうそうに人に酔い顔を青くしていた。やっとの事で人がはけて間近で見る事が出来たのはクラス分け後の最初のホームルーム5分前だった。

「はあ〜やっと落ち着いて息が吸えるわ…にしても…」

アンタとは離れられない運命なのね〜。と安堵かそれとも別の何かか、「もうヘトヘトよ…」と言わんばかりに神奈(カンナ)は机に突っ伏した。

「何よその言い方わたしは一緒のクラスで嬉しいのに…」

と不貞腐れた顔でいると

「だぁ〜れが嫌だって言ったのよ。私もアンタと一緒のクラスで嬉しいわよ。」

と可笑しそうに巴(ハク)の鼻先を指でなぞる。も〜辞めてよ〜と神奈(カンナ)の手を払いながら何だかんだかわちゃわちゃしていると

ガチャと大袈裟な音を立てて一足遅れて教室の扉を開くのは、

「すみませんっ、校長室に居ましたっ…はあ〜疲れた…」

と例の彼 花田 凌仁(ハナタ リヒト)の登場だ。キャ〜とまたもや黄色い声援に包まれる教室。蚊帳の外のその他男子はというと何とも居心地が悪そうな顔で凌仁(リヒト)を横目に睨んでいた。

「お〜話は聞いてる。席付け。空いてる所で構わん」

その言葉を皮切りに「凌仁(リヒト)くんここ空いてるよ!」「ズルい!私の隣も〜!」とガチャガチャと始まるソレに痺れを切らしたように、

「じゃあここに座ろうな^^どうせ1時限目は席決めだ。少しの間だけ我慢出来るな?^^」

と凌仁(リヒト)の背後に近ずき肩に手を乗せたかと思うと教卓の横に無造作に置かれた椅子に凌仁(リヒト)を座らせる。「何よそれ〜」ぶ〜とブーイングが飛び交う中で関係ない様な顔をして話を再開する。

「ねえ、神奈(カンナ)…」とコソッと神奈に耳打ちする。

「あの先生若くない?凌仁(リヒト)君は勿論かっこいいけど、あの先生も負けず劣らず…」

「…まあ、言われてみれば?てか、あんた本当にそういう事しか口から出て来ないのね…」
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