政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
お兄さんは私を待たせ、店に入っていった。
まもなくして出てきたお兄さんの手には、真っ赤な薔薇の花束が握られている。

「誕生日、おめでとう」

「え、私にですか……?」

戸惑いつつ、差し出されたそれを受け取った。

「せっかくの誕生日が父親と喧嘩して家出しただけで終わったら、可哀想だろうが」

ニヤリと片頬を歪ませて笑うお兄さんは意地悪そうに見えた。
それでも薔薇の花束なんてもらって嬉しくないわけがない。

「ありがとうございます」

あっというまに上機嫌になっている私ってチョロいんだろうか。
でもおかげで父との話し合いが平行線のままに終わっても、落ち込まなくてすみそうだ。

近くの駐車場に停めてあった車にお兄さんは私を乗せた。
従兄が就職祝いに買ってもらったという高級外車と色違いのようだが、お兄さんもいわゆる〝いいところ〟の人間なんだろうか。
スーツも教師が着ている安っぽいのとは違い、布地も仕立ても上等に見えた。

「家はどこだ」

「えと……」

私の言葉どおりにお兄さんはナビをセットし、その指示どおりに走った。
一度はお兄さんのおかげで解けた気持ちだが、家が近づくにつれてまた緊張してくる。

「大丈夫だ、俺が上手く言ってやる。
あとは俺に話したように、自分の気持ちを父親に伝えろ」
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