政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「もーっ。
怒ってないです!」

……嘘。
顔を合わせないように彼に背中を向ければバレバレだ。

「わるい、わるい。
ひさしぶりに清華の顔が見られて嬉しいんだ」

後ろから零士さんが私を抱き締めてくる。

「今度は長くて二週間、清華と会えなかっただろ?
会えないあいだ、清華分不足で死ぬかと思ったぞ」

「清華分ってなんですか?」

おかしくてつい、くすりと笑いが漏れた。
もそもそと身体を動かし、彼と向きあう。

「清華の成分。
不足するとパフォーマンスが激しく落ちる」

「なんですか、それ」

零士さんはどこまでも真剣で、くすくすと笑っていた。

「だから家を出る前に百パーまで充電しておかないとダメだし、帰ってきたら速攻で減った分を補充しないといけない」

「零士、さん?」

彼の指先がそっと、私の耳に触れる。

「このピアス、そろそろセカンドに変えられるだろ?」

「そうですね……」
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