政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
零士さんに穴をあけてもらってそろそろひと月たつ。
赤みもすっかり取れ、消毒のときには痛みもなくスムーズに動くようになっていた。

「明日、俺が買ってきたピアスに変えよう。
……楽しみだな」

うっとりと目尻を下げた零士さんが、指先で私の耳朶を弄ぶ。

「……そう、ですね」

どきどきと心臓の鼓動がスキップする。
零士さんはときどき、こういう顔をして私を惑わせた。

「それと。
……補充、させてもらっていいか」

耳を触っていた手が、頬へと移動する。
艶に濡れた目が、私を見ていた。
ぽーっとそれに見惚れ、ゆっくりと頷く。

「ありがとう」

零士さんの顔が近づいてきて、唇が重なる。
触れて、離れて。
――離れて、触れる。
啄むように何度もそれを繰り返した。
合間で息継ぎして落ちる私の吐息は、次第に甘くなっていく。

「零士、さん……」

ぎゅっとその腕を掴み、懇願するように彼の目をじっと見つめる。
しかし彼は口端を僅かに持ち上げて妖艶に笑い、もう一度唇を触れさせただけだった。
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