政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「お口に合えばいいんですが」

「清華が作ってくれたってだけでごちそうだって言っただろ」

零士さんが箸を取り、口に運ぶのをどきどきとしながら見つめる。

「うん、美味しい」

眼鏡の下で目尻を下げ、実に嬉しそうににぱっと彼が笑う。

「……よかったです」

熱くなった顔に気づかれたくなくて俯いた。
……零士さんが笑うだけで嬉しくなっちゃうのって、――変、なのかな?

「清華は料理、上手いんだな。
前のビーフシチューも美味しかった」

「上手いだなんて、そんな。
人並みなだけですよ」

零士さんは美味しいと喜んでくれるが、メイドさんほどの腕があるわけではない。

「作れるだけ凄いよ。
俺はまったくできないからな」

マグロカツを箸で摘まみ、ぱくりと彼が口へ入れる。
何人も使用人がいるような家で、料理をする必要はない。
しかもそれが男性ならば。
父だってまったく、料理はできなかった。

「俺ができないことができる清華、尊敬する」

「え、尊敬なんてそんな」

零士さんは真剣で、料理ごときで……なんて言っちゃいけないんだろうな。
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