政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「俺と違って清華は料理ができるだろ、服も作れる。
優しいし、俺はやはり最高の女と結婚したんだなって思う」

箸を止め、真っ直ぐに彼が私を見つめる。
私も箸を置き、それを見つめ返した。

「最高だなんて褒めすぎです。
零士さんだって優しいし、私の願いをなんでも叶えてくださるし、素敵な旦那様にもらわれたんだなって私も思います」

眼鏡の奥で目尻を下げ、零士さんが私に微笑みかける。

「俺たちは最高の夫婦だな」

「そうですね」

私も自然に笑顔になっていた。
――最高の夫婦。
零士さんの言うとおりだと思う。
知らない人と結婚だなんて不安ばかりだったけれど、この人で本当によかった。

「あとは清華が俺のことを好きになってくれたら申し分ないけどな」

「あ、えと」

右の口端だけを僅かに持ち上げた零士さんは、また箸を取って食べはじめた。

「その。
……もうちょっとだけ、待ってください」

結婚してひと月半ほどがたったが、私が零士さんと過ごしたのは二週間にも満たない。
それでも私には零士さんを好きになっている自覚がある。
もう少しすればもっと、――きっと零士さんが望むほどに深く、好きになれると思うから、待っていてくださいね。
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