政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
それが酷く、もどかしい。
その先、が欲しいのに。

「ここから先はまだだ」

私から離れた零士さんはもう一度だけ唇を触れさせ、髪を撫でた。

「……意地悪」

上目遣いで睨んだところで零士さんには効かない。
焦らされるたびに、もっとずっと――深く零士さんが欲しくなる。
私が本気になるまでしないって彼は言うが、この気持ちはそれとは違うの?
ただ単に身体の反応、と言われればそうなのかもしれない。
私にもこれが、自分の気持ちなのか身体だけなのかわからなかった。

夕食はいつも、和やかに進んでいく。

「俺がいないあいだ、なにか変わったことはなかったか?」

「んー、特にないですね」

しいてあげるなら、鞠子さんから「お式には呼んでくださいますよね?」なんて聞かれたくらい?

「あ、お義母さまが披露宴の招待客がだいたい絞れたので、確認してほしいって言っていましたよ」

先日、いつもお稽古で義実家へ行った際に、招待してほしいって人があとからあとから湧いてくるのよって、苦笑いで言われた。
実家でも似たようなことを言っていたので、こちらはさらにだろう。

「面倒だよな、なんで披露宴なんて開かないといけないんだろうな?」

はぁっと、本当に嫌そうに零士さんの口からため息が落ちる。

「それを言っちゃダメですよ」
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