政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
清華(きよか)

父に呼ばれてびくりと大きく身体が震える。
また怒鳴られるんだろうかと身がまえたが、リビングで向かいあって座るように言われただけだった。

「お前の話を聞かず、頭ごなしに怒鳴って悪かった」

父が私に頭を下げる。
それに対して首を横に振り、私も頭を下げた。

「私もきちんとわかってもらおうとせず、悪かったです。
すみませんでした」

「もう一度きちんと、どうしてお前が服飾系の学校へ行きたいのか説明してくれるか」

「はい。
じゃあ……」

今度は静かに父が頷き、私も冷静に話しだした。

……結局。
高校はこのまま、内部進学することになった。
服飾系の学校へ進んだら大学進学が難しくなってくるからと言われれば納得するしかない。
これから先の人生、学歴は必要だ。
私のためだけじゃなく――将来の旦那様のためにも。
そういう世界に生きているのだから、仕方ない。

その代わり、大学は私の進みたいところに進んでいいと許可が出た。
さらにその先、二十五歳までの自由も。
なぜ二十五なのかとは思ったが、母が父と結婚したときの年が二十五だったそうだ。
照れながら父に言われ、それ以上なにも言う気はなくなった。



――あれから十年。
大学は被服科があるところへ進んだ。
思い切ってひとり暮らしもはじめたし、父の説得もあって学費と生活費は出してもらったが、遊ぶお金はアルバイトで稼いだ。
家の後ろ盾がない状態で、どこまでひとりでできるのか試してみたかった。

二十五歳までの期限付きは就活で重い枷となったが、それでも人に恵まれて採用してもらえた。
充実した二年と少しの社会人生活を送り、私は父との約束の誕生日を迎えようとしている。
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