政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
それに私も苦笑いで返した。
私だって政治的な思惑しかない披露宴なんて面倒だ。
それでも。

「その代わり、結婚式は素敵なものにしましょう?」

「そうだな」

零士さんは眼鏡の奥で目尻を下げ、にっこり笑って同意してくれた。
それがあるから、我慢できる。
決断してくれた零士さんにも、認めてくれた家族にも感謝しかない。

食事のあとはコーヒーを飲んで少しだけまったりし、零士さんは書斎にこもってしまう。
だから私も少し、作業をする。

寝るときは一緒。

「おやすみ、清華」

「おやすみなさい」

私の額に口付けを落とし、零士さんはすぐに寝息を立てだした。

「おかえりなさい、お疲れ様。
……好き、ですよ」

その二文字を口にした途端に、顔がぱっと熱くなる。
そーっと眠っているのを確認し、その頬へ自分から口付けをした。

「おやすみなさい」

零士さんに身体を寄せ、その腕に抱きつく。
枕もいいが、零士さんが一番よく眠れる……。

毎日は特に大きな変化はなく進んでいく。
きっとこのまま、何事もなく式の日を迎えるんだと思っていたけれど……。
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