政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
唇が離れ、息が上がっている私の頬に触れたままじっと零士さんが見ている。
零士さんの髪からはぽたぽたと雫が落ちていた。

「……んんっ」

再び、零士さんの唇が重なる。
激しい嫉妬をぶつける口付けには果てがない。
角度を変え、何度も何度も零士さんは私を貪った。
ただ、彼がしたいようにその身を任せる。
その先もしたいというのならかまわない。
それで零士さんの気が済むのなら。

「くそっ!」

唐突に悪態をついたかと思ったら突き放された。
零士さんが温度調節のダイヤルを一気に回し、頭からシャワーをかぶる。
私の足下にも飛沫がかかるそれは……水?

「先、出てろ」

「あ、はい……」

わけがわからないまま浴室を出て、身体を拭く。
ドライヤーで髪を乾かし、どうしようか悩んでいたら零士さんが出てきた。

「先、寝室行ってろ」

「……はい」

言葉短く指示を出され、それに従う。
寝室のソファーに座り、零士さんが来るのを待った。
これで離婚かな。
私は零士さんが――好き、なのに。
自分の軽率な行動を心の底から後悔した。

「待たせたな」
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