政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
不愉快そうに彼の語尾が上がっていく。

「たぶん、毛布が一枚しかなかったからで、それだけです!
寝ていただけでそれ以上はありません!
起きたら服だってそのままでしたし!」

早口でそのときの状況を捲したてた。

「だから、油断するなとあれほど……」

額に手を当て、はぁーっと呆れたように零士さんがため息を落とす。
……うっ。
それに関してはなにも言えない。

「わかった、次からは注意しろ。
いや、次からは門限九時だ。
それを超えたら捜索願いを出すからな」

「……はい」

門限九時とか高校生時代みたいだが、これは自業自得だから仕方ない。

「……心配、したんだぞ」

私の手からカップを取って置き、零士さんはそっと私を抱き締めた。

「電話にも出ないし、なにかあったんじゃないかって生きた心地がしなかった」

「……ごめんなさい」

ああなるのがわからなかったわけじゃない、あと三十分だけ、なんて甘い考えだった。
そもそも、当初の予定どおり一次会だけで帰ればよかったのだ。

「ごめんなさい、ごめんなさい。
許してなんて言えないけど……」
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