政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
もっとがっつりしていいですよ、なんて言いづらい。
でも、いつもの唇を触れさせるだけのキスよりも、昨晩のようなキスの方が充電しやすいんじゃないかな……?

ちょいちょいと手招きし、零士さんに顔を近づけてもらう。
その耳に口を寄せ、そっと囁いた。

「……その。
もっと……その、あの」

しかし私の口からはそのあのとしか出てこない。
軽くパニックになっていたら、零士さんが私の頭をぽんぽんした。

「ん、わかった。
清華、ありがとう」

顔が離れ、額に口付けが落とされる。
そっと私の顔を両手で挟んで眼鏡の奥からじっと見つめたあと、ゆっくりと彼が顔を近づけてきた。
私も目を閉じ、彼を待つ。
唇が重なり、ちろりと舐められて素直に口を開いた。
すぐにぬるりと彼が入ってくる。

「……ん……ふ……」

零士さんが私に触れるだけで喜びが全身を駆け巡っていく。
私の口からも零士さんの口からも、熱を帯びた甘い吐息が落ちた。
頭の芯が熱くなり、じんじんと痺れる。

……溺れる。

零士さん以外、なにも考えられない。
ただ、零士さんだけが……欲しい。

「……はぁーっ」
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