政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
唇が離れ、黙って零士さんを見上げる。
これで、終わり?
私はもっと……。

「物欲しそうな顔をしているな」

頬に触れたまま零士さんの親指が、自身の濡らした唇をなぞる。
頭の中を見透かされたようで、一気に顔が火照った。

「あの、その」

「そんな目をするなんて、この先まであと少しかもな」

するりと頬を撫で、彼の手が離れる。

「……そのときが楽しみだ」

右の口端をふっと小さく上げ、零士さんが笑った。

「食事にしよう。
今日は昼が食べられなくて、腹が減ってるんだ」

「今日は私が作ったんですよ」

熱い顔を誤魔化すように笑い、零士さんに膝から降ろしてもらう。

「それは楽しみだ」

彼も笑って、ソファーを立った。

今日もご機嫌に、零士さんは私の作った料理を食べている。

「俺がいないあいだになにか……あったよな」

右頬を歪め、ニヤリと零士さんが笑う。

「……零士さんは意地悪です」
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