政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
零士さんがドアを叩くが、鍵をかけて無視する。
私のやりたいことはなんでも実現させてやると言っていた。
でもなんでこれはダメなの?
理由さえちゃんと聞かせてくれれば、私だって納得する。
でもなにも言わずに言うことを聞かせようだなんて、絶対に認めない。

「仮縫い、終わったのにな……」

トルソーにかかっている衣装を見てため息が漏れる。
これを着た零士さんが見てみたかった。
喜んでほしかった。
なのに、なんで喧嘩なんてしているんだろう?

気がついたらドアの外は静かになっていた。
その代わり、携帯がピコンピコンと続けざまに通知音を立てる。

【明日は休みにしたから、デートしよう】

【どこに行きたい?
どこでも清華の行きたいところへ連れていってやる】

【ここでディナーとかどうだ?
それともこっちがいいか?】

「こんなので機嫌が取れると思っているなら、大間違いですよ」

無視しようと思ったが、零士さんが急に休みを取るだなんて難しいのは知っている。
なのに私のために明日を休みにするなんて、かなりな無理だ。
そこまでされて、これ以上黙っておくなんてできない。
それに私だって、ただ自分の希望を叫ぶばかりで理由をまったく説明しなかった。
こんなの、零士さんだってわかってくれるはずがない。

……中学生のときから成長ないな、私。
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