政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
進路で父と揉めた私は今日みたいに自身の要望を叫ぶばかりで、自分の思いをきちんと説明しなかった。
今日の私はあのときと同じだ。
冷静になって、ちゃんと零士さんと話し合わねば。

部屋を出てリビングに行ったが、零士さんはいなかった。
書斎へ行き、おずおずとドアをノックする。

「零士さん……?」

控えめに声をかけてドアを開けると、淋しそうに丸まった背中が見えた。

「もう怒っていませんよ」

後ろからそっと零士さんに抱きつく。

「俺も悪かった」

零士さんの手が私の手に触れ、振り返る。

「おいで」

軽く手を引っ張り、彼は私を膝の上に上げた。

「古手川さんは元会社の上司で、どこも採用してくれなかった私を雇ってくれた、恩人なんです」

「うん」

いつものように零士さんが私の額に口付けを落とす。

「私の父と母を知っても、態度を変えずにいてくれました。
それに古手川さんの作る服が好きで。
だから……」

「手伝いにいきたい?」

零士さんの言葉にうんと頷く。
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