政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「許可してやりたいが、こればっかりは許せない」

彼は申し訳なさそうで、きっとなにか理由があるのだというのは理解した。

「昨日の夜、私が古手川さんと一緒……だったからですか?」

彼の反応からいってたぶん違うんだろうな、というのはわかっていながらそれでも聞く。

「違う……と言いたいところだが、否定はできないな」

自嘲するようにふふっと零士さんは小さく笑った。

「清華ににおいを移すほど近くにいたなんて、許せない」

ぼそりと落とされた声は酷く冷たくて、魂の底から凍りつきそうだ。

「でも清華がなにもなかったと言うんだから、なにもなかったのだろう。
なら、これ以上彼に嫉妬しても仕方ない」

眼鏡の奥で目尻を下げ、にっこりと笑って彼が私を見る。
それは少し作り物めいていたが、彼が冷静であろうとしているのは感じ取ったのでなにも言わずにおいた。

「なら、なんで」

「んー、今はまだ言えない。
すぐにわかるから楽しみにしておけ」

「楽しみに……?」

わけがわかっていない私を今度はおかしそうにふふっと笑い、零士さんは私の唇にキスを落とした。

「もっと清華を可愛がりたいが、まだ仕事があるんだ」
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