政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「じゃあ、あとは頼んだ」

もう用は済んだとばかりに零士さんはさっさと部屋を出ていく。
残された三人で微妙な空気になった。

「では……」

気まずそうに女性の方が口を開く。

「以前勤めていらっしゃった会社での実績を拝見させていただきました」

「はい」

背筋をただし、彼女の話を聞く。

「今までの作品やお仕事を聞いてもよろしいですか?」

「はい」

聞かれるがままに趣味で作っていた中学時代から、会社員時代までの話をする。
さらには現在、結婚式の衣装を自分で作っている話も。

「そのドレスは見てみたいですね」

興味深そうに彼らが頷く。
〝金持ち妻の優雅な趣味〟などと思われているんじゃないかと思ったが、彼らは真摯に私の話を聞いてくれた。
……バックに零士さんの影がちらついているのもあるかもしれないが。

「実力は申し分ないかと思います。
ただ、オリジナルも見てみないことには判断ができません」

「はい、わかっています」

こんな事態になるだなんて予想もしていなかったので、ポートフォリオなど準備していない。
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