政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
遊ぶお金は自分で稼いでいたこと、社会人になってからは父に家賃を納め、お給料だけで遣り繰りしていたこと。
料理に失敗して部屋を消火器で真っ白にし、泣きながら掃除したこと。
そんな話を零士さんは面白そうに聞いている。

「清華が気取っていないのは、そういうのも影響しているんだろうな……」

とろとろと零士さんの声が溶けていく。

「やはり清華は、俺が思ったとおりの……にん……げん……」

急に静かになったかと思ったら、彼はすーすーと寝息を立てていた。

「私のせいで無理をさせてしまいましたもんね。
ゆっくり寝てください」

起きていないのを確認し、その唇に自分の唇を重ねる。
穏やかな寝顔を眺めていたら、私も昨晩遅くまで頑張っていたせいか眠くなってきた。
ちょっとくらい、寝てもいいよね……。

目が覚めたときにはすっかり暗くなっていた。

……まだ寝てる。

起こさないようにその顔に落ちかかる髪を払う。
私が起きたときに彼がまだ眠っているなんて稀だ。
それだけ疲れているのだと胸が痛い。

「ひゃっ!?」

零士さんの手が私を引き寄せ、小さく悲鳴が漏れた。
そのまま、抱き枕よろしく後ろから私を抱き締める。

「無意識……?」
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