政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
頭上から気持ちよさそうな寝息が聞こえる。
……のはいいが、がっちり抱き締められているせいで身動きが取れなくて、ちょっと苦しい。
起こしたくはないが、もそもそと身を捩らせてしまう。

「んんー」

不満そうに彼が声を上げ、ぴたりと身体の動きを止めた。

……どうしよう、これ。
このまま朝まで起きないとか……ないよね?

私は明日の午後からお稽古しか用事はないからこのまま泊まっても大丈夫だが、零士さんはどうなんだろう?

どうしたらいいか悩んでいたら、零士さんの手が私の身体を弄っているのに気づいた。

「えっ、ちょっ、……んんっ」

……これ、起きてないんだよね……?

本当にどうしていいのかわからない。
それに豪語していただけあって……キモチイイ。

「えっ、ヤダ、零士さん」

やめさせようと手を叩くが止まらないし、目も覚まさない。
零士さんとどうこうというのにすでに抵抗はないが、それでも寝ぼけては嫌だ。

「零士さんってば!」

強く声を出したら、動きがぴたりと止まった。

「……きよか……?」

まだ完全に目の覚めきっていない声が聞こえる。
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