政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「俺はなにもしていない」

嘯いて零士さんがグラスを口へ運ぶ。

「まあ、そのために会社を買ったのはあまり感心しませんが」

「清華のためじゃない、服を買うのが面倒くさかったんだ」

さらっと零士さんは言ってのけたが、なにを言っているのかさっぱり理解できない。

「私服を買うのが面倒くさくてな。
あの会社の服は気に入っていたし、これでもうわざわざ買う必要はない」

彼は淡々と先付けのカニの酢ものを食べているが、……そんな理由で?

「それに、他の会社の制服もあそこで作ればいいからな。
清華のためじゃない」

だから私のためじゃないと零士さんは強調してくるけれど、……そういうことにしておこう。

「そうだ、俺の服も清華が作ってくれたらいい」

零士さんはさもいい考えだといった顔をしているが。

「え、ええーっ?」

今日はウィメンズの話のみで、メンズの話はしていない。
しかし零士さんの結婚式の衣装は私が作っているし、メンズデザインができないわけではない。

「結婚式の衣装をブランドイメージで披露するのもいいよな」

零士さんは早速、携帯にメモしはじめたけれど、……ハイ?

「そのー、ドレスとかはブランドイメージに沿って作っているわけじゃないので……」
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