政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
私の続く質問で、零士さんが苦笑いを浮かべる。
それは呆れているよりも、楽しんでいるようだった。

「零士さんとゆっくりお話しできる機会ってあまりないじゃないですか。
せっかくできた時間なので、もっと零士さんのことを深く知ってみようかな、って」

「……すまない」

それまで笑っていたのに、急に彼が真顔になる。

「清華に淋しい思いばかりさせて」

「淋しいなんて、そんな」

……ひとりだって平気。
そのはずだった。
しかし零士さんにめいっぱい可愛がられた翌日は、いくら彼の枕を抱き締めたところで寒かった。
せめてもの救いは、衣装作りと集中するものがあったのと、週二で通う義実家でよくしてくださったのだ。

「もう少しだけ待ってくれ。
そうしたら休みが増えるはずだから」

「私はいいんです。
でも零士さんには無理してほしくないだけです」

「清華は優しいな」

零士さんの腕がそっと私を包み込む。
私は優しくなんかない、優しいのは彼だ。
こんなに優しい人に愛されて、私は幸せだ。
でも私は彼に、なにか返せているんだろうか……?
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