政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「はい、もちろん。
未練がないかと言えば嘘になりますが、後悔はないので大丈夫です」

「そうか」

それににっこりと笑って答えれば、父はほっと胸を撫で下ろしたようだった。

お手伝いさんに振り袖を着せてもらう。
もう七月なのに振り袖とは、とも思うが、空調は効かせてくれているので問題はないだろう。

「清華、今年も届きましたよ」

着替えが済んだ頃、母が大きな花束を抱えてやってきた。

「嬉し……い?」

しかし、それを見て戸惑った。
なんでこんなに、大きいんだろう?

十五のとき、父と進路で揉めてプチ家出し、その際に格好いいお兄さんに助けられた。
ナンパ男を撃退し、私の話を聞いて父と向きあう勇気をくれ、父にも私の話を聞いてやってほしいとお願いしてくれた。
そのおかげで、二十五までの自由を得られたのだ。
さらにはその日が私の誕生日だと知った彼は、年の数の真っ赤な薔薇の花束を贈ってくれた。

それから毎年、誕生日には年の数と同じ本数の、赤薔薇の花束が送られてきた。
でも今年は、あきらかに二十五本よりも多い。
これ、いったい何本あるんだろう?

「カードもありますよ」

「ああ、はい」

興奮気味の母からメッセージカードを受け取った。
< 17 / 252 >

この作品をシェア

pagetop