政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
零士さんがくいっと私にさらに手を差し出す。
それに嬉しさ半分、戸惑い半分で手をのせた。
そう言えば急に社員の皆さんたちが静かになったけれど、どうしたんだろう……?

「まだ仮縫いとはいえ、ウェディングドレス姿の清華、綺麗だな。
……キス、したくなる」

気がついたら零士さんの手が、そっと頬に触れていた。

「あのー、零士さん?
人前ですし……」

さりげなく手で押さえつつ、辺りを見渡す。
しかし、いつのまにか部屋の中は私たちだけになっていた。
どうも零士さんが目配せとかで外に出させたようだ。

「人前じゃないなら問題ないだろ」

「え、えーっと……」

いいのか?
いやこんなふうにキスしたいがために人払いするのはよくない。
でも数日ぶりに会えた零士さんには触れたい……。

「……ちょっとだけ、ですよ」

自分から顔を上げ、目を閉じる。

「わかった」

なんて物わかりのいい返事をしていたのに、すぐに、唇を割って舌を侵入させてくる。
止めさせようと胸を押しかけたが、できなかった。
そんなことをすれば確実に、倒れる。
それどころか足がぐらつくのが怖くて、零士さんの首に手を回して抱きついたくらいだ。
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