政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
……いつもなら手が届かないのに。
十五センチでこれだけ違うんだ。

この場で本格充電する気なのか零士さんはなかなか離れない。
皆が戻ってきたらどうしよう。
そんなスリルが、さらにどきどきとさせた。

「……はぁーっ」

唇が離れ、少しのあいだ見つめあう。

「……まだするか?」

レンズの向こうから艶に濡れた黒い瞳が私を見ている。
誘うように零士さんの親指が私の唇を撫で、つい「はい」と言いそうになったが、ここは家ではないのだと思い出した。

「……もうダメです」

両手で零士さんの唇に触れ、軽く押す。

「残念」

小さくふふっと笑い、零士さんは顔を離した。

「休憩ありがとうございましたー」

そのタイミングで社員さんたちが戻ってくる。
休憩、って?

「来たときにお茶休憩してこいって言ったんだ」

私が怪訝そうなのに気づいたのか、零士さんはそう言ってウィンクした。

「では、再開しても?」
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