政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「あー、その前に。
これ、俺も着ていいか?」

零士さんの親指がくいっと、トルソーにかかっている自分の衣装を指す。
すぐにでも本縫いに進めるそれは、今日のために仮縫いのままにしてあるがもう調整は済んでいる。
なのにまた着るんですか?

「一緒に並んでみた方がバランスがわかるだろ」

それは零士さんの言うとおり、かも。

「えっと。
……いい、ですか?」

これは余計な仕事を増やすことにならないかと思いつつ、それでも社員さんに聞いてみる。

「いいですよ。
それにこれ、社長が着ているところ、見てみたいです」

女性陣からきゃーとか悲鳴が上がっているところからいって、ここでも零士さんは人気みたいだ。
なんか複雑……。

零士さんも私が着替えた簡易更衣室で着替える。

「どうだ?」

「素敵です!」

出てきた途端、黄色い声が飛ぶ。
それにむっとしてしまうのって、……心が狭いのかな。
でもお稽古のときは零士さんの取り合いを苦笑いで見ていられるのに、ここではダメなのはなんでだろう?
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