政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
それにもしそうだとしても、私には謝る気も進路を変える気もない。

「かのじょー、さっきからそこに立ってるけど、暇なの?」

「……え?」

声をかけられて俯いていた顔を上げたら金に近い茶髪の、若い男が立っていた。

「暇ならオレと、お茶しない?」

耳にいくつもピアスをつけている男は、馴れ馴れしく私の肩に手をのせてくる。

「あの、えっと。
……けっこう、です」

曖昧に笑い、その手から逃れるように一歩身体をずらす。
けれど男はさらに距離を詰めてきた。

「そんなこと言わないでさー。
お茶くらいいいじゃん?」

「その、大丈夫、なので」

こんなとき、女子校育ちで男性慣れしていない自分が憎い。
それにいつものようにボディガード連れなら、こんな人から声すらかけられなかったのに。
通り過ぎる人たちに視線を送るが、見て見ぬフリというよりもスルーされているようだった。

「なにが大丈夫なの?
なんか困ってるみたいじゃん。
あ、もしかして家に帰れない系?
ならオレんち、来ていいよ」

「えっ、あ……!」

男から強引に手を引っ張られ、足が竦む。
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