政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「え、いいと思いますけど……?」

社員さんたちの口から、疑問の声が上がる。
ドレスとしての出来は悪くない。
でも私はこれに納得ができないのだ。
だって出来や似合っていない問題もあるが、私らしさのかけらもないドレスなんて認められない。
披露宴用のドレスだから無難なデザインがいいだろうとか頭のどこかで思っていた。
それが、如実に出ている。
こんなの、私のドレスじゃない。

「うん、それがいい」

ざわめく周囲と違い、あっさり零士さんから同意が出て驚いた。

「今からだと時間的に厳しいと思うが、できるか?」

「誰に言ってるんですか?
できますよ、それくらい」

余裕たっぷりに笑って返す。
これくらい、できなきゃブランドを立ち上げてもやっていけない。

「よし、頑張れ」

零士さんの顔が近づいてきて、それは手で押さえた。

「ここでキスは、ダメです」

「じゃあ帰ってからする」

とか言いつつも、零士さんは私の額に口付けを落とした。
人前でもすぐキスする件については一度、零士さんと話し合った方がいいかも。

「今日はありがとうございました」
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