政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「えっと……」

何度かに分けて送られてきたメッセージには、誰にも相談できなくて凄く困っているから助けてほしい、迎えを寄越すからそれで来てくれと書いてあった。

「んんー?」

あの鞠子さんが困っているからといって、人に、ましてや私に助けを求めるとは思えない。
だからといって助けてほしいと言われて無視するほど私は人でなしではないが、それでも安易に行けるほど考えなしでもない。

「零士さんに相談……」

電話番号を呼び出そうとした瞬間、ドアがノックされた。

「奥様。
久礼様からのお迎えが来ておりますが……」

「はい、今行きます!」

もし、本当に鞠子さんが困っていて私に助けを求めたのなら悪いので、とりあえず行こう。
それに着くまでの時間で零士さんに連絡くらいできるはずだ。

……などと思って迎えの車に乗ってすぐに、携帯は取り上げられた。
同行を求めたメイドさんも拒否され、ひとり。
すでに不穏な空気で不安でしょうがない。

私の両隣に座る、強面の男を無言で睨む。
こんなの、全然怖くない。
中高の頃についていたボディーガードの方がよっぽど、人が殺せそうな顔をしていた。

……鞠子さん、どんなトラブルに巻き込まれてるの?

顧問弁護士はいるはずだが、その人にも周りの親しい人間にも相談できない内容だったら?
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