政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
ここにいるのは鞠子さんと、その背後に立つ男がひとり。
車にいたふたりと運転手は外で見張りでもしているようだ。

「そういう趣味の変わった男なんじゃないですか」

男はにこにこと笑っていたが、胡散臭くてキツネを思わせた。

「零士さんはそんな男ではないわ!
変なこと言わないで!」

鞠子さんが叫び、男を睨みつける。

「おおこわ」

しかし男は、肩を竦めただけだった。

「まあいいわ。
……それで」

咳払いして気持ちを切り替えたのか、鞠子さんが私に向き直る。

「清華さん。
零士さんと別れてちょうだい」

「……はい?」

あまりも予想どおりすぎて首が斜めに傾いた。

「あなた、そんな顔をして私をバカにしてるの!?」

鞠子さんの声がキィキィと頭に響く。
バカにしているつもりはないが、間抜けな顔をしている自信はあるので申し訳ない。

「だいたい、あなたなんて零士さんと釣り合わないのよ!」

「まあ、……そうですよね」
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