政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「なにも?
へぇ」

零士さんの声は淡々としているが、それが返って恐怖を引き立てる。

「……れいじ、さん。
たいした、こと、……ない、ので」

頬が激しく痛むせいで声が出しにくい。
それでも彼と目を合わせ、精一杯微笑んだ。

「清華……」

腰を手にはーっとため息を吐き、零士さんは二、三度頭を振った。

「甘いな」

そう言いつつ私の背後に回り、手足の拘束を解いてくれる。

「そういう甘い清華は嫌いじゃない」

ちゅっと無事な額に唇を落とし、零士さんは私を抱き上げた。
意識は朦朧とし、ぐったりとその胸に頭を預けて目を閉じる。

「鞠子。
この償いは改めてしてもらうからな」

「わ、私はなにも!
すべて、そこの男が!」

ヒステリックに鞠子さんが叫ぶ声が聞こえる。
私は気にしていないから彼女を責めないであげてと言いたいが、もうその気力はない。

「おやおや。
私どもはそのお嬢様に命じられてやっただけですが」
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