政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「はっ、シラを切るのか。
キサマが鞠子を唆し、ことを企んだのは調べがついているんだぞ」

「はて、なんのことですか?」

男はどこまでもとぼけていて、最初の胡散臭いキツネというイメージはあっていたようだ。

「……土蜘蛛(つちぐも)組」

零士さんの口からその名が出た途端、空気が緊張した。

「フロント企業が摘発されて大変らしいな」

「……さて。
なんのことやら」

「関係ないならいいけどな。
今頃、組に家宅捜索が入っているはずだ」

「なっ!?」

男が慌てると同時に証明するかのように携帯が鳴る。
落ち着かず話す男の声と共に、足音が遠ざかっていった。

「鞠子。
この話はすでに、君の父親の耳に入っている。
早く帰れ」

私を抱え直し、零士さんは歩きだす。
待たせてあった車に乗り、私の腫れた頬にそっと触れた。

「遅くなってすまない」

彼の声は後悔に沈んでいる。
ただ黙って首を振ったところで意識は途切れている。
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