政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
目を開けたら、酷く心配そうな零士さんの顔が見えた。

「れい、じ、……さん」

頬が痺れて、唇が動かしにくい。

「しゃべらなくていい。
痛くないか?」

無言でそれに首を振る。
熱を持ち、じんじんとする頬は痛みすら感じなかった。

「れい、じ、さん」

……ここは、どこ?
家ではないみたいだけれど。
あれから、私は……。

「ここは病院だ」

黙ってわかったと頷く。

「幸い、頬の腫れと軽い脳震盪以外、異常はないそうだ」

触れた両頬には湿布が貼られていた。
零士さんの手が伸びてきて、私を抱き締める。
その手は、カタカタと心細そうに震えていた。

「遅くなってすまなかった」

零士さんは助けに来てくれたのに、どうして詫びるんだろう。
また黙ってううんと首を振る。

「清華はこんな目に遭わせた俺を、許してくれるんだな」

眼鏡の向こうで目が泣きだしそうに歪む。
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