政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
キスの合間にそっと、零士さんの顔を見る。

「ん?」

目が合って、彼は眼鏡の影に笑い皺をのぞかせた。
その幸せそうな顔にそれでなくても熱い頬がさらに熱くなる。

……初めて会ったとき、どこかで見たことある気がしたし……。
そうだとしたら、いろいろ納得がいく。

「その。
……零士さんは昔、私を助けてくれた人ですか?」

じっと、零士さんの顔を見上げる。
そうだと思いたい、いやきっとそうに違いない。

「思い出したのか」

目尻を下げ、うっとりと彼の手が私の髪のひと束を取る。

「……はい」

零士さんが中学生のとき、私を助けてくれたお兄さん。

お見合いの日、機嫌が悪かったのはきっと、私が忘れていてはじめましてなんて挨拶したから。
初夜、私は拒んだのにも関わらず怒らず雰囲気が変わったのは、好きな人として語られたのが自分だったからに違いない。

「ずっと、清華と結婚できる日を待っていたんだ」

くるくると零士さんの指先が、私の髪を弄ぶ。

「あのあとから清華の父上に、清華の様子をときどき尋ねていた。
清華が夢を実現させるのが、楽しみだったんだ。
でも話を聞いているうちにだんだん、清華に惹かれていって……好きに、なっていた」
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