政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「あの、足が痺れないコツとかあるんですか?
零士さんが教えてくれるのは気合いとかで、まったく役に立たないんですよ」

零士さんには悪いが、呆れるようにため息をついてわざと茶化してみせた。

「それは……ダメですわね」

小さくくすくすと鞠子さんが笑い声を立てる。
うん、彼女の気が紛れたのならそれでいい。

「コツがあるなら、教えてくれませんか」

「ええ、私でよろしければ」

まだ涙の残る目で笑った鞠子さんに、以前のような私に対する優越感みたいなものはない。
もしかしたら普通の世界で普通に出会っていたら、友達になれていたかもしれない。
ううん、これから友達になっていこう。



三回目のブランド立ち上げの打ち合わせで、改めてブランドコンセプトを発表した。

「凄くいいと思います!」

褒めてくれるのは嬉しいが、手放しで褒めているだけじゃないかという疑惑が拭いきれない。

「〝これから先を切り開いていく、女性のための〟というのはよくありますが、〝古きを取り入れ〟というのがいいです」

「新旧の融合だけじゃなく、さらに切り開くのは素敵です」

口々に賞賛されて素直に喜べないのはなんでだろう?
あれかな、今日は過剰なくらい歓迎されたからな……?
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