政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「零士様!」

俺の突然の訪問で、久礼家は大騒ぎになっていた。
久礼は神鷹の分家ではあるが、本家には頭が上がらない。
それどころかなにかあれば簡単に取り潰されてもおかしくないくらいだ。
こんな状況でその、本家次期当主の俺が来たのだ。
パニックになるのは当然だろう。

「このたびは娘がとんだ粗相を……!」

俺を応接室へ通し、鞠子の父親――久礼が畳に額を擦りつける。
それを醒めた目で見ていた。

「娘には重々、言って聞かせますので……!」

部屋に鞠子はいない。
きっとまだ帰ってきていないのだろう。
もっとも、この状態で帰ってこられるとも思っていない。

「言って聞かせて終わりか?」

「え……」

みるみる久礼の顔が青くなっていく。

「鞠子は清華の優しさにつけ込んだ。
優しい清華の心を踏みにじったんだ。
これがどういうことかわかるか?」

「も、申し訳ありません……!」

再び久礼は畳に額を擦りつけ、ガタガタと震えていた。
人の心のわからない傲慢な鞠子。
そして彼女を育てた親。
こんな家――こんな世界、滅べばいい。
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