政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「どうした?
怖い夢でもみているのか?」

指先でそっと、その涙を拭ってやる。
初めはこの、熱く夢を語る少女がそれを実現する様が見たいと思っただけだった。
しかし父親から、努力を重ね、自力で頑張る彼女の様子を聞いていたら、だんだんと惹かれていた。
結婚してからは、俺を、周りを気遣う姿にさらに。

清華は人の悪口を言わない。
自分がどんなに、不快な目に遭っても。
酷い目に遭わされても、事情があったのなら仕方ないと許してしまう。
自分はあんなにも酷く、傷ついているのに。
その姿はいじらしくて、愛おしい。
それだけじゃない、自分でできることは自分でやると周りに――俺に甘えない。
そういう強い一面は淋しくもあると同時に惚れ直した。

俺の優しい清華。
人のことばかり考え、優しすぎて自分が傷ついているのに気づかない。
なら――。

「俺が全力で、清華を守る」

なにかを探すように動く清華の手を握ってやる。
俺の手を強く握り返し、彼女は安心したかのように息を吐き出した。

「おやすみ。
マイ、フェアレディ。
よい夢を……」


【終】
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