政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
番外 彼が身体を鍛える理由
――今日は家族で動物園に来ています。

「ん?
どうかしたのか?」

「いえ……」

不思議そうに零士さんが私の顔をのぞき込む。
それに曖昧に笑った。
……この状態はいったい、なんですか?なんて聞けない。

零士さんの左腕には娘の陽愛(ひな)が抱き抱えられているのはいい。
なんで右腕に私まで抱き抱えられているのだろう?

「あのー、零士さん?
ふたり抱っこはさすがに大変だと思うので、私は歩きますが?」

「別に大変じゃないぞ?
……あ、ほら、陽愛。
ぞうさんだ」

「ぞうしゃん!」

象を見つけ、零士さんがそちらに足を進めていく。
陽愛も大好きな動物とあって大興奮で足をばたつかせているが、零士さんはまったく気にする様子がない。

……まあ、わかってはいるんだけれど。

「ぞうさん、大きいねぇ」

内心で苦笑いし、私も象へと目を向けた。



私の妊娠がわかり、零士さんは私を抱っこしての移動も、家で膝の上に抱き抱えるのもやめた。
絶対に落とさない自信はあるが、それでももしなにかの弾みでそうなったときに困るから、って。
そういう気遣いをしてくれる零士さんが好きだ。

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